できれば本に埋もれて眠りたい -45ページ目
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物語がとまらないポールオースター

ムーンパレス:青春小説。若い主人公の自分勝手などうしようもなさを、本人も恋人も誰も止められない。構成は夏目漱石の「こころ」のように破綻しているが、ポールオースターの芳醇なストーリーと「自分をハンドリングできない」というテーマが結びついた記念碑的作品。
偶然の音楽:中途半端な遺産を相続した主人公が、車と賭博にのめり込んでいく。テーマがシンプルなだけに、底の見えない穴をのぞいたような恐ろしさを感じる。
リバイアサン:自由の女神像を破壊して回る人とその周辺の話。こちらも特殊な話な分、ストーリー性は高まるが、やはり闇は深い。それは、いくら年をとっても、かわらない。

ニューヨーク3部作といわれる「シティオブグラス」「幽霊たち」「鍵のかかった部屋」は、あまりにもストーリーが進展しないので僕にはしんどい。
そのあとの喪失の3部作(とでもいうのか)のほうが、読みやすく、ずっと闇の深さと広がりを感じられる。

思うにポールオースターという人はあふれるほどのストーリー性を持ちながら、初めにそこから離れることで作家としてやっていけるかの試金石としたのではないだろうか。
最近出た「ミスターヴァーゴ」は、空飛ぶ老人と少年のめくるめくストーリーの悲しい話だ。まるで禁じていたストーリー性を解き放ったような作品だ。

この作家も新作が待たれてしかるべきだろう。
ロバート・レッドフォードあたりが「リバイアサン」ぐらい映画化しないかな。
うーん。今のアメリカじゃ、むりっぽいか。

あふれだす椎名誠

多作家だ。アマゾンで検索すると322件もでてきた。
エッセイスト、小説家、カメラマン、映画監督、編集長と無節操なぐらい色々やっている。
本屋や図書館に行っても、椎名誠を選ぶというより、椎名誠の何を選ぶか、といった感じだ。
その中で、何がいいかというと、個人的には「旅モノエッセイ」と「社会人モノ」「私小説モノ」だ。
初期作品「わしらは怪しい探検隊」は、ただ天幕持ってキャンプに行くことが楽しい、と世に知らしめた作品だ。この作品だけでも大いに価値がある。
椎名誠は「なんとなく楽しいけど、大声でいうのははばかられる」というあたりをきっちり「楽しいけんね」と言い切ってしまう、センスがいい。
今もなお新刊があふれだしているが、好みはあるが楽しめる本が多い。
同じ時代に生きていて、幸運だと思える作家の一人だ。

村上春樹ランキング

というわけで、村上春樹ランキングです。

1、国境の南、太陽の西
2、ねじまき鳥クロニクル
3、羊をめぐる冒険
4、ノルウェイの森
5、スプートニクの恋人

本読みの基準としては、やはり内容重視です。
しかも個人的には
「どうしようもないことに出会ったとき、人はどうすればよいか」
みたいなことをテーマに持っています。

国境の南、太陽の西」は、周囲とずっとうまくなじめなかった僕が、結婚後、唯一少年時代に心通わせた女性と出会う、という話です。

思うに、村上春樹のテーマの1つに「周囲となじめない/なじまない」というものがあると思います。
周囲の無理解に対して、自分の世界を作り上げて迎合せずに立ち向かう。
この姿勢が、僕が村上春樹の小説に惹かれる理由の1つです。

それが「国境の南、太陽の西」では、ファンタジーでもなく、バックボーンとしてでもなく、正面から取り上げられています。
周囲と「なじまない/なじめない」自分を受け入れ、ささやかな生活をつくり、妻となる人を見つけ、社会的成功をつかむ。しかしそこで「なじまない/なじめない」自分を理解してくれる女性が現れる。

陳腐な話ともいえますが、ある意味怖い話ともいえます。
自分が作ってきた世界が、自分の内側から壊れていく。
いったい、これはなんなんでしょうか。

ノルウェイの森」の次に出版された本なので、期待も大きく、どやかく言う人の多い本でした。
しかもあの「ねじまき鳥クロニクル」から切り出されたそうです。
しかし、村上春樹のある部分を比較的正面から書いた本だと思っています。
この小説の中で、書ききられているいくつかの部分は、今でも僕の心を強く打ちます。
そんなわけで、「国境の南、太陽の西」が、僕の中では一番です。

よしもとばなな11、村上春樹8、椎名誠8

ここ数年、読んだ本の書名と作家をメモしている。
先日、統計をとってみたら、この3人がトップ3でした。
なんだかミーハーな感じだけど、これが正直なところです。
よしもとばななは、多作で最近はすごく書けてる。
なので新刊をチェックしていたら、トップになりました。
村上春樹は、まあ、順当な結果でしょう。
椎名誠は、新刊を全部チェックはしていませんが、エッセイや旅モノをチェックするだけで、かるく冊数が稼げます。
昔、ある作家が死んだとき
「もう、新刊を心待ちにすることはできないんだ」
と、思って悲しくなったことがあり、それからは現存の作家もよく読むようになりました。
村上春樹の新刊を読むなんて、今を生きている幸せですね。
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