なんだその時代、の面白さ/村田エフェンディ滞土録
村田エフェンディ滞土録
梨木香歩
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時代は文明開化の頃のある日本人の考古学者のトルコ滞在記。
中国やインドのように列強国からの経済的略奪が進むトルコ。
トルコでは、無事大政奉還を成し遂げた日本への憧れがある。
トルコ政府のそのことへの期待も感じながら、博物館に通う主人公の考古学者、村田。
同じ下宿には、
列強の理論の中にいながら、考古学への思いを寄せるドイツ人、オットー。
こちらも考古学の研究者でありながら、哲学者的要素も滲み出すギリシャ人、ディミィトリス。
大英帝国の栄華によくしていた頃作られた下宿の主人、英国人のディクソン夫人。
トルコ人でイスラム教徒、下宿のした働きでいながら対等にクチをきくムハマンド。
そして、ムハマンドが拾ってきた鸚鵡。
これら住人がいがみ合うことなく、日々のことや遺跡のことについて緩やかに話しながら日々、ちょっとした事件がおきていき、最後に知り合ったトルコ人の女性からお願い事をされるのです。
歴史の激動期にいることでだけで湧き上がってくるような未来への期待を背景に物語はなぜか静かに動いていきます。
現代小説の「今を何とかしなければ未来はない」という切迫感がなく、時代に身を任せていけば未来は開かれるという底流に流れる空気が最大の魅力です。
歴史小説でもないのに、こんな小説初めて読みました。
ラストのしっかりしていて、「この作者は何を考えてこの作品を書いたのだろう」と思いながらも、その違和感の余韻を楽しみました。