鑑識眼と行動力/柳宗悦と朝鮮 自由と芸術への献身 | できれば本に埋もれて眠りたい

鑑識眼と行動力/柳宗悦と朝鮮 自由と芸術への献身

柳宗悦と朝鮮 自由と芸術への献身

韓 永大


柳宗悦と朝鮮―自由と芸術への献身/韓 永大
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大正から昭和にかけて活躍した思想家、美術評論家の柳宗悦の評伝です。

柳宗悦といえば「民芸」を発見した人として有名ですが(有名なんです)、

日本が朝鮮半島を支配しようとしたときに

朝鮮の友に贈る書』などで日本政府のやり方を一貫して非難した人なんですね。


そのきっかけとなったのが、朝鮮の石窟庵 と李朝期の陶磁器への感動です。

そんな個人的な理由で、とも思うのですが、個人的なだけにぶれもなく、

日本専制の時代に「朝鮮民族美術館 」まで設立してしまう実行力もあるのです。


そういう、独自の美術の鑑識眼と行動力のある人なので、機会があれば関連の本を読んでいます。


今回は評伝なので、退屈かなぁと思って読んでいたのですが、


親族に嘉納治五郎がいたり、勝海舟の影響を受けていたりと、明治の時代の歴史上の人物と接点があったことや、朝鮮民族博物館設立の細かな経緯(費用が足りなくて政府のあの時代に政府の建物を借りたこと)や協力者の話(すでに李朝期の陶磁器に注目している人がいたが、一般的にはだれもそんなものに目を向けていなかったこと)など、結構ドラマチックな話(家の周りに公安がいつもいた)や、逆に現実的な話(陶磁器の購入費用は奥さんの声楽のコンサートによるもの、また美術館は常時公開はされずに、観覧者がきたときだけあける)もあり、


興味深く読めました。



結局柳宗悦の肝である「美術への感動と行動」については、哲学者のカントの思想を受け継いでいる、というような説明もあり、カントのほうは良く分かりませんがなんとなく理解も深まりました。


今まで読んだ柳宗悦の本の中では比較的理路整然としていて、しかも作者が柳宗悦を敬愛しているのがわかり気持ちのいい本です。

興味のある人はためらわずに読んでみてください。