何を教わるべきだったか/ジーコ備忘録
ジーコ備忘録
ジーコ
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トルコのクラブチームの監督をやっているところから始まります。
ジーコは意外に文章がうまく、じつに情感たっぷりにあの8分のことを思い出します。
・・・もともと私は過去を振り返るタイプの人間ではない。すぐに前を向いてしまう。振り返るのは得意ではない。しかし、そろそろ語り始めなければならない。口を開かなくてはならない。それが私の務めであると自覚している。
そういって始まる回顧の初めは当然オーストラリア戦です。
この試合の一番大きなアクシデントに坪井の退場があったとしています。
そして坪井の退場で響く、W杯前の田中誠の怪我による出場辞退。
結果、休暇中だった茂庭が、W杯のフィールドに立つことになったのです。
そして小野の投入。
実績のある福西とのボランチのコンビで、放り込まれたボールを取り戻してチームを落ち着かせる役目を担っていました。
そして最初の失点は、それまで好調だった川口のパンチングのミス。
同点。
そして、逆転の一点と、入れられてはいけない追加点。
それぞれ行った采配の意図とそれまでの積み重ねを分かりやすく説明します。
そして具体的な状況説明から、その状況に陥らざるを得なかった根幹について語りだします。
それは、肉体的な貧弱さと、大事な、勝負を決めるところで守りきれない、もう1点が入れられない勝負弱さについてです。
肉体についてはたとえばジーコ自身の肉体強化や欧米の選手でも、上背がなくとも肉体のしっかりしている選手を上げます。
また、勝負弱さについては、かつてジーコの兄に「ジーコはボールを使ったあらゆるテクニックができたが、あるときから本当に点を入れるのに必要なテクニックしか使わなくなった」といわれるぐらいシビアに勝つことを考えているジーコだからこそ、その重さをわかっていることだと思います。その反対が、ドイツとかでしょうか。
この勝負弱さについては、私はゴルフのパットのようなものでここでしっかりしないとそれまでどれだけドライバーで飛ばしても意味がなくなってしまうんですね。
ここを理解するには、何度もこういった試合を落として、選手もファンもマスコミも勝つために本当に必要な技術を学ばなければいけないのだろう、と思います。
そして本は、就任前後からの話になっていき、つくづく思うのは「どうしてジーコにもっと学べなかったのか」ということですね。
体の強化、審判へのアピール、選手間の結束、勝利への執念、プロとして全力で立ち向かうこと、
結局、我々はW杯を勝ち抜ける力はあったかもしれないが、上記の条件への意識が弱く、予選で落ちる可能性も十分あった。
その触れ幅が、ぎりぎりのところで大きく、敗退のほうに振れてしまい、それをどうにかする意識・技術もなかったということなんでしょう。
そんな分からず屋の日本に丁寧に自分の持っているものを教え込もうとしたジーコに改めて感謝の言葉を言いたくなりました。
ありがとう、ジーコ
そして今度こそ心身ともに向上させ、オーストラリアに勝ち、W杯で上位進出して欲しいものです。
ああ、しかしジーコ。本当にありがとう。
ジーコのウィキペディア
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