奇妙な島での日常/オーデュポンの祈り | できれば本に埋もれて眠りたい

奇妙な島での日常/オーデュポンの祈り

オーデュポンの祈り

伊坂幸太郎


オーデュボンの祈り (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
¥660
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第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作にして、伊坂幸太郎の出世作。

出世作、ということで期待せずに読んだら意外に楽しめました。


会社を辞め、気の迷いでコンビニ強盗を行った主人公。

あっというまに警察に捕り、逮捕したのは旧友。

その旧友は興味本位で老夫婦の片方だけ殺すような人間として最悪な奴。

連行されるパトカーが事故を起こし、気が付くと見たことのない島へ連れて行かれていました。

そこは、外部と接触を断ち、人殺しを容認された人物や、死を悼むことを仕事にしている人物がいる

奇妙な歴史を辿った島。

ここでは未来を予測するかかしがいて、人々の信頼を得ているのですが、そのかかしが殺されます。

主人公は誰が殺したかを探すため、聞き込みをはじめます。

そして旧友がかつての恋人を連れてやってきます。

さて、かかしの死の真相とは。元彼女は無事無事なのか。


と、まぁこんな感じで、設定がややこしく技量が追いつかないずほころびが多い、とママ初期の作品に多い問題は抱えているものの、透明感のある世界観、悪人への強い感情、言葉遊び、「ウソ」と現実のブレンド、と伊坂幸太郎のオリジナリティはすでにここに見ることができます。


単行本では賞への応募作として論評を加えられていますが、まぁみんな言いたいようにいっているだけで特に見るべきものは見当たりませんでした。これだけのものを書かれて賞をあげないわけにはいかないでしょう。


結構ほかの作品とは違う読後感で、これはこれでよかったのですが、その後の本を見ると、この感じに留まらなくて良かったなとも思いました。


なんか出世作、とかいうとこっちまで緊張して読んでしまいました。