ちょうどいい佐藤多佳子節/神様がくれた指 | できれば本に埋もれて眠りたい

ちょうどいい佐藤多佳子節/神様がくれた指

神様がくれた指

佐藤多佳子


神様がくれた指 (新潮文庫)/佐藤 多佳子
¥860
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久しぶりの普通の小説。佐藤多佳子の丁寧なテイストを楽しめました。


あらすじは、主人公は二人。刑務所がえりの昔かたぎのスリと弁護士くずれの占い師。

刑務所から出たその日、迎えにきてもらった育ての親の財布を掏られ、そのスリのあとを追うと、路上で投げ飛ばされ肩を脱臼。そこに偶然通りかかった占い師が自分の家の大家である医者に連れて行って、奇妙な縁が生じてしばらく二人は一緒に住むようになります。スリは、自分を投げ飛ばしたスリチームを追うがなかなか見つかりません。一方の主人公は、弁護士の家に生まれてその反発からいつのまにか占い師になったものの、ギャンブルで生活が破綻寸前。ある高校生の客を占っていると、非常に悪いカードがでてきます。気になって色々言うが逃げられてしまいますが、また別の日にやってきて色々話すうちに漠然とした状況がわかってきます。そしてあるときまた二人の主人公の偶然が重なって物語が展開し始めます。


佐藤多佳子は2冊目ですが、派手すぎず地味すぎない主人公の人選と、主人公の適度な書き込み(余計な心理描写や背景説明が少ない)、人生の機微を丁寧にフラットに書いていて、なにか「佐藤多佳子節」のようなものを感じて安心して読めました。


主人公の造詣もありますが脇役もでしゃばらず、スリの親分のや、追っているスリチームの頭の冷酷さとその揺らぎ、などいい味があります。


ラストは若干ご都合的でしたが、ここまで書き込んであれば主人公に情が移ってしまい大目に見て楽しめます。

最後の二人でやる場面が書きたかったのかなぁ、とも思います。


2冊読んで楽しめたのでやっぱり機会があれば「一瞬の風になれ」を読んでみたいと思います。