短篇は短篇として/アイデアのつくり方 | できれば本に埋もれて眠りたい

短篇は短篇として/アイデアのつくり方


ジェームス・W・ヤング

アイデアのつくり方


アイデアのつくり方/ジェームス W.ヤング
¥816
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ビジネス書で、竹内均の解説を除けば62ページ程度で、非常に薄い本。

原書の初版が1940年で、広告マンの書いた「アイデアのつくり方」についてのワンアイディアの本ですが、なるほどそうかなとも思うのでご紹介。



まず、新しいアイデアとは新しい組み合わせである、としています。

そしてアイデアの生まれる段階を、必ず下記の経過を通って生まれてくるとしてます。


1、資料集め――諸君の当面の課題のための資料と一般知識の貯蔵をたえず豊富にすることにから生まれる資料と。


2、諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。


3、孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。


4、アイデアの実際上の誕生。<ユーレカ!分かった!みつけた!>という段階。


5、現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具現化し、展開させる段階。


それぞれは新鮮なものではありませんが、こうして並べられて、必ずこの経過を辿る、と思ってみるとちょっと納得感がでてきます。


まず、すべてのアイデアは新しい組み合わせである、というのは、極端に言えば人が理解できるアイデアであるなら、理解できる言葉で語られなければならず、であるならまったくの新しいアイデアではなく、それは既知のものの新しい組み合わせ、ということができるでしょう。


で、次の5段階については、たしかにコレをやって新しいアイデアがでないなんてことはない、と直感的に思ってしまいます。


1、は広告であれば、その商品と消費者についての資料集め、そしてそれ以外の個人的な知識や体験の積み重ねですね。まずこの固有の資料集めと、個人の知識、ここで差がつく基礎部分なのでしょう。


2、はその資料の関連性をあれこれ考えることです。つまらないことやどうにもならないことも含めてメモしたり、色々といじってみることです。でもこの段階では、経過は求めません。じっくりとその資料に色々な角度から当たってみることです。たぶんこれがアイデアのマジックタッチというか、本当に差がつく部分でしょう。


3,4、を明文化したのが、この本の目新しいところでしょう。つまり「待つ」という段階を意識的にすることで、アイデアの創り方の論理化できない部分を組み入れ、徒労感をなくすことができたのではないでしょうか。なかなか無意識の作用まで明文化はしづらいものですが、今までの体験からそれができたのが、すごいですね。


5、これがじつは実際的には大事なところかもしれません。それぞれの世知辛い状況に合わせてアイデアを世に送り出すのは、なかなか難しいことですが、逆にこの部分を明文化することで、アイデアそのものの成否ではなく「世に送り出す作業」というのが必要、という意識はあったほうがよりスムーズになるかもしれません。



ビジネス書って針小膨大で、ワンアイデアの短篇ネタを長篇にしたりでがっかりすることも多いですが、この本は短篇は短篇としてしっかりかかれているので、そこは気持ちがいいですね。内容も納得ですし。