どうした絲山/北緯14度
北緯14度
絲山秋子
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エッセイは絲的メイソウ しか読んでいませんが、うーんエッセイはイマイチ合わないのかなぁ。
講談社創業100周年記念企画の書き下ろし100本 のなかの一本で、セネガルに2ヶ月間いった紀行文です。
なぜセネガルかは、小学生の時からの憧れのミュージシャンがいるから。
出発から帰国までの心情が綴られ、現地での想いと、得意の別視点を持ち込む手法で群馬の恋人らしき「ムッシュ・コンプロネ」へのメールで構成されています。
少しだけ同行した編集者への心情の変化、現地のコーディネーター「トッカリさん」への甘えと反発、知的憂鬱とでもいうべき医務官の女先生(ラジ&ピースの女医のモデル?)、外交官の現地への興味のなさの反発、セネガル人への友情と、友情の上での甘えへの怒り、そして憧れのミュージシャンとの出会い、など色々な要素がはいっています。
それからセネ飯はおいしそうでしたね。ぶっかけ系ということで。やっぱりフランス植民地だったからなんでしょうか。
でも、紀行文好きとしては、全然ものたりません。
2ヶ月もいるのに、定宿としているダカールから離れのは数度。
ミュージシャンとも会ったのは1回だけで、音楽との触れ合いはそれ以外は1回程度。
自然描写や街の情景よりも多くかかれているのは、現地での人間関係。
人間関係が苦手だろうに、なんで海外までいって人間関係にずっとこだわっているのでしょうか。
人間関係もさほど珍しいものでもなく(誰が好き嫌い、合う合わない、甘えている甘えていない)、むしろ同じなことのほうが新鮮でした。
個人的には、紀行文も芸の一つ。思った感じたことをそのまま書くのではなくて、それなりに芸にして欲しい。不快に思ったことも芸にして楽しめる文にしてくれればいいのですが、なんだかそのままです。なんか読んでいると8:2で不快、という感じです。
それから「ムッシュ・コンプロネ」。創作上の想像かもしれないのでなんともいえないのですが、絲山秋子にしては甘甘で、小説家としての自意識はどうした絲山、といいたいですね。
彼と持ち家ができて、幸せになってしまった、ということなんでしょうか。
小説家の紀行文は文章がしっかりとしているので結構好きなのですが、北緯14度は合いませんでしたね。
女性で絲山秋子の作品が好きな人は、また違うかもしれません。
ばかもの、に期待をしましょう。
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