なか卯のうどんと素人の身勝手/夏から夏へ | できれば本に埋もれて眠りたい

なか卯のうどんと素人の身勝手/夏から夏へ

夏から夏へ

佐藤多佳子


夏から夏へ/佐藤 多佳子
¥1,575
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2007年世界陸上大阪大会 の日本陸上の400mリレーの観戦記と朝原宣治末續慎吾塚原直貴高平慎士小島茂之 の取材記事。

もちろん「一瞬の風になれ 」の流れを引き継いで、爽やかで熱い内容になっています。


世界陸上はテレビでやっていたときは「またテレビで煽ってるよ。あぁ、結果でなかったね。やっぱり陸上はだめだな」と勝手に思っていたのですが、この本を読むと全然思い入れが違ってきます。


それぞれの選手の積み重ねてきた経験と思いが「日本で行う世界陸上」に集中されていく様子は、読んでいて緊張感が高まります。

それでいて大阪のホテル近くには食事のできる施設がなく、予選の夜「なか卯」でリレーメンバーが集まって静かにうどんを食べていた、といのはリアリティがありながらもなんとも奇妙なエピソードでした。


それぞれの選手についての取材も面白いです。朝原の余人には近寄りがたい独立独歩の姿勢や末續の恵まれなかった環境からのスタートで、どこかのタイミングで躓いていたら今の姿がないことなど、知らないことばかり。


そして塚原直貴、高平慎士、小島茂之もそれぞれ個性豊かでじつに速そう。


でもこういうのを読んでいつも思うのは、エピソードとしては朝原とかと同じぐらい面白いのだけど、塚原や高平や小島などは結局歴史に名を残すような記録を出せるのだろうか、ということ。


結局速いかどうかはエピソードではなく他のなにかのせいなのだから、こういった本で読みたいのは「結果にまつわるエピソード」であって「エピソードにまつわる結果」ではないのだから。「エピソードにまつわる結果」ならどんな記録でも物語になる。


あぁ、本当に素人ほど勝手で残酷なこという。


でも、この本読んで「がんばれ」と思わない人はいないと思ます。


「一瞬の風になれ」が面白くて、ノンフィクションOKな方は是非。