深海に潜むももの/シャドウダイバー | できれば本に埋もれて眠りたい

深海に潜むももの/シャドウダイバー

シャドウダイバー


シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち/ロバート・カーソン
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シャドウ・ダイバー 上―深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち (ハヤカワ文庫 NF 340)/ロバート・カーソン
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シャドウ・ダイバー 下―深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち (ハヤカワ文庫 NF 341)/ロバート・カーソン
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こちらもフロンティアもの。


アメリカの東海岸、ニュージャージー沖。

地元の漁師に教わった、沈没船。

沈没船巡りを主催するスキューバ・ダイビング船の船長が、「未知の船」へのダイビングを仲間に募り、潜ろうとします。

水深70M。スキューバダイビングの限界に近い深度まで潜り、暗く、窒素酔いの激しい中で見た沈没船は、どうやらドイツの潜水艦「Uボート」らしい。


それから本当にUボートなのか、Uボートなら、誰が乗ったどのUボートだったかの確証探しが始まります。



しかしそこは70Mの深海。

ベテランのダイバーでも海底に入れる時間は20分。そして海面に上がるまでに1時間以上かけなければ、減圧症にかかってしまいます。

そして窒素酔いのため、わずかなミスも大事だと思い込んでしまってパニックになってしまいます。

しかも相手は40年以上も前から海底に沈んでいる潜水艦。

少しでも無理をして何かを取ろうとしたり、船室に入ろうとすると、予測もしないことが起こります。


すぐにドイツ軍のマークの入った皿は見つかるのですが、軍の記録を調査してみても、この潜水艦が誰が乗っていたか特定できるものが見つかりません。


ほかに職もあり家族もあるのに、正体不明のUボートに魅入られていく男達。

仲間も減っていき、安全に探せる場所は探し尽くしたところで、ある決断をします。
それは、・・・



単行本で527ページ。アメリカのノンフィクションにありがちな、周辺事項の資料だったり、謝辞だったり、執筆の動機だったり余計なところも多く、失敗かなぁと思いつつ本文に入ったところ、ぐいぐい引き込まれてしまいました。


厚い理由は登場人物の背景をしっかり書いているからで、この背景もめっぽう面白いです。


主人公の1人のチャタトンは、正義漢の天才ダイバー。「なぜこんなことが起こっているのか」ということを自分の目で知るためにベトナム戦争に志願して医療兵として参加し、紆余曲折があって自分の天職として「ダイバー」を見つけ、職業ダイバーとして生活していくうちにUボートにのめりこんでいくようになります。


もう1人の主人公はコーラ―。こちらは沈没船海から戦利品を取ることに夢中なダイバーで、海の荒くれ集団「アトランティック・レック・ダイバー」の一員。初めはチャタトンと合わないものの、何度か潜っていくうちにお互いの技量とその心が通じ合っていき、二人を中心にしてUボートの謎に迫っていきます。


そして、初めこのツアー主催した船長のネイグル。ダイバーとしての十分な技量を持ちながらUボートが見つかった頃からアルコール中毒がひどくなり始め・・・。



もちろん人物だけではなく、謎解き的な文書探しの展開もあります。

Uボートの専門家への聞き取り。アメリカ海軍の記録。ドイツ海軍の記録。市民の声。軍人の話。

アメリカ軍の専門の公文書を集めた図書館にも行き、ドイツへの行きます。

簡単と思われていたどのUボートかの確定は、専門家さえも超えた領域に入っていきます。



結局なにが面白かったのかといえば、もちろん「深海の冒険」も「未知の歴史」も面白かったのですが、そこまで狂騒に走らせる何か、が面白かったです。


別に金が儲かるわけでもなく(本になったのも、著者が偶然興味をもったかららしい)、なにかが見つかって大きく人生が変わったわけでもなく(むしろ失ったもののほうが多い)、自分の人生の一部として逃げずに立ち向かったというところに惹かれたのでしょうか。



まぁ、傑作です。

是非読んでみてください。