お隣拝見「沼地のある森を抜けて」
自分が読んでいろいろ考えた本を、他の方がどう読んでいるのか。
そう思って他の方のブログを読んでいると、自分の気づかない読み方、より丁寧な解説、自分と同意見、と色々なブログがでてきます。
そこで、気になる本について「お隣拝見」させていただき、
興味深いブログを勝手に紹介させていただけたらと思います。
というわけで今回の「お隣拝見」は梨木香歩の「沼地のある森を抜けて 」
自分でその巧さと壮大さをうまくまとめられないなぁ、と思っていたので、いろいろ拝見させていただきました。
全体的に多かったのが、今までの作品は良かったけど、この作品は「よく分からない」「説教くさい」「あわない」
という方。そんななかでもしっかりとかかれているブログを紹介します。
●あらすじとご自分の感想が丁寧に書かれていました。
たんぽぽさんの映画と本の『たんぽぽ館』
●今後も読んでいきたい、というのが同意見です。
●「沼地のある森を抜けて」以外の本のことから書き始めて、最後のまとめは、そう書けばよかったと私も思いました。
●自分の物語、として受け止めているので、深い感想を書かれています。
るんたさんのstray woman
研究者のひとり言/ゆらぐ脳
ゆらぐ脳
池谷裕二・木村俊介
- ゆらぐ脳/池谷 裕二
- ¥1,300
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ライターの木村俊介から脳研究者の池谷裕二に、脳についての一問一答形式の本です。
日本経済新聞夕刊に2007年7月から連載されたものの抜粋。
脳の最新研究を分かりやすく本にしてきた池谷氏ですが、この本では最新研究をまとめる、というより今考えていることを話す、という感じの本になります。
そのため内容がまとまっているものではなく、非常に散文的に脳のこと、研究のことが語られています。
脳のことで面白かったのは、一つ一つの神経細胞のことは分子生物学的に少しずつ分かってきているようですが、その細胞を集めた「回路」的振る舞いについての研究はまだまだされていないということです。
というかその研究のやり方さえ暗中模索中。池谷氏を含めた少数派が研究しているという感じでした。
研究のことで面白かったのは、研究の実感について、毎日神経細胞の相手をしていたら、研究とはべつのところで細胞の質感のようなものが分かってくる、ということです。
論文としてはいえないけれど、立ち上ってくるにおいのようなもの。
なんかそういうのってありますよね。
最後のあとがきでは面白かったのは年代の話ですね。
「・・・少なくとも今の私は二十代には戻りたくはありません。あの無意味に有り余ったエネルギーをぶつけ合う無駄な時間(それがヒトの「成長」には必要だという意見もあるでしょうが)は、得るものより失うもののほうが多く、疲労だけが残る。二十代という時は、今振り返ると、加熱した感情と無根拠なプライドだけが先走った時期だったように思います。少なくとも私はそんな研究者でした。」
一般論として読むこともできますが、あの飄々とした語り口の池谷氏がそんなふうに思っていたとは、全然分かりませんでした。なんだか研究の実感も湧いてきます。
脳の知識を得ようと本書を開くとその散文的な構成に混乱してしまいますが、ある研究者のひとり言と思えば、なかなか楽しむことができました。
理系エッセイの落としどころ/生物と無生物のあいだ
生物と無生物のあいだ
福岡伸一
- 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)/福岡 伸一
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てっきり「生物」と「無生物」を分けるものはなにか、ということについて詳しく書かれたものかと思ったのですが、実は「生物」と「無生物」をテーマに、DNAの歴史や作者の研究生活を語り、最後に筆者の言う「動的平衡」にたどり着く、というエッセイでした。
初めはキャッチ―な野口英世の、実はアメリカでは評価されていない話題から入り、DNAの二重らせん構造発見にまつわる陰の人々についての話題を、DNAを分かりやすく説明しながら語っていき、最後は筆者の語る「生物と無生物の間」の概念として「動的平衡」という概念を説明しながら、筆者の研究対象であった「酵素を運ぶ際にいかにして細胞膜を越えるか」という研究について書かれています。
DNAの発見にまつわる物語は良くまとめられていて、まさに「レース」といった感じで、地道に努力を重ねる人、その成果を分かっていない人、あるヒントをきっかけに構造を思いつく人、色々で、個人的にはこうやって科学はより早く進歩していくんだな、と思いました。
動的平衡とは、動物の体は摂取した栄養とどんどん置き換えられていき、たとえば数ヶ月前のカラダとまったく同じたんぱく質はカラダにはなく、すべて摂取したものと置き換えられている、ということです。
なるほど、と思いつつ動的平衡の生物学的意味や実証を行うのではなく、動的平衡についての説明を簡単に終えた後、自分の研究であり動的平衡の構造を支える「酵素の細胞膜の越え方」についての研究についての説明と他の研究者との競り合いについて話になるので、読み終えて「で、結局その間にあるのってなんだっけ」という感じになりました。
面白かったのですが、その読後感のすっきりとしない感じが高評価を妨げます。
「生物と無生物のあいだで」
というタイトルならしっくりきたのですが。
論考なら論考で自分の研究を語らず、自分のエッセイなら藤原正彦の「若き数学者のアメリカ」のように自分の観点をもっと述べる、としてもらったほうがいいのでは、と思いました。
せっかく、DNAの話も面白く書け、自分の研究やその周辺についてもうまく書けているので、焦点がぼやけてもったいないなと。
その間の新しいところを狙っているのでしょうか。
2006年、第一回科学ジャーナリスト受賞作だそうです。
- 若き数学者のアメリカ (新潮文庫)/藤原 正彦
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イントロの楽しさ/鴨川ホルモー
鴨川ホルモー
万城目 学
- 鴨川ホルモー/万城目 学
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やっと読みました「鴨川ホルモー」
「ホルモー」を抜いてしまえばただの恋愛青春物語ですが、それでも楽しめましたね。
主人公が大学に入学し、同級生の鼻への一目ぼれであるサークルに入ります。
普通の遊びサークルかと思っていたら、ある日から「ホルモー」が始まります。
初めは半信半疑でしたが、やがて練習を重ね「ホルモー」の正体が明らかになり、その本番の日がやってきます。
しかしそのころ主人公の勝手な恋愛は支障をきたし始め・・・。
途中、「ホルモー」が徐々にその全容を見せ始める頃が一番面白かったですね。
いったいこのあと、どんな展開がまっているんだろう、と久しぶりにわくわくしました。
「ホルモー」がサッカーや陸上ならことには成らなかったでしょう。
そして「ホルモー」の謎が解け始めると、そのわくわくもぼちぼち治まってきました。
ま、そればっかりはしょうがないですね。
主人公の小説の筋を破壊しかねない行動や独特の趣向、平気な顔で突飛な行動をする友人などはそれなりに目新しく丁寧にかかれているので、楽しむことができました。
反面、一目ぼれ相手・ライバル・同期の女性などは比較的造詣は平凡でしょうか。
後半はなんだか物足りないような気もしますが、これは他の本で補完されるのでしょうか。
何はともあれ、一瞬でもわくわくできたので楽しむことができた本でした。
次も読んでみましょうか。
亡命と物語と人/文盲
アゴタ・クリストフ
文盲
- 文盲 アゴタ・クリストフ自伝/アゴタ・クリストフ
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「悪童日記 」のアゴタ・クリストフのエッセイだということで読んでみました。
相変わらずの装飾のない文章で、11篇の短いエッセイが書かれています。
亡命の様子も詳しく書かれていて、雪の中、数ヶ月の子供を抱えて国境を越えて、手配した違法業者に「後は街まで真っ直ぐ」と言われ別れたあと、森の中で道に迷ったことや、亡命した後、分からない言葉で子供のオムツやらミルクやらを確保しなくてはいけなかったことや、その後職や住む場所を国が手配してくれたことなどが分かりました。
その他、貧しかった幼少時代の思い出や、文字を読むのも書くのも好きだったことや、徐々に詩の投稿を始めたことなどが書かれていました。
量的には非常に少ないエッセイ集ですが、そっけない文章で恵まれない環境下でも物語を書かざるを得ないというのは、一部の人と物語の必然性を感じました。
奇妙な島での日常/オーデュポンの祈り
オーデュポンの祈り
伊坂幸太郎
- オーデュボンの祈り (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
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第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作にして、伊坂幸太郎の出世作。
出世作、ということで期待せずに読んだら意外に楽しめました。
会社を辞め、気の迷いでコンビニ強盗を行った主人公。
あっというまに警察に捕り、逮捕したのは旧友。
その旧友は興味本位で老夫婦の片方だけ殺すような人間として最悪な奴。
連行されるパトカーが事故を起こし、気が付くと見たことのない島へ連れて行かれていました。
そこは、外部と接触を断ち、人殺しを容認された人物や、死を悼むことを仕事にしている人物がいる
奇妙な歴史を辿った島。
ここでは未来を予測するかかしがいて、人々の信頼を得ているのですが、そのかかしが殺されます。
主人公は誰が殺したかを探すため、聞き込みをはじめます。
そして旧友がかつての恋人を連れてやってきます。
さて、かかしの死の真相とは。元彼女は無事無事なのか。
と、まぁこんな感じで、設定がややこしく技量が追いつかないずほころびが多い、とママ初期の作品に多い問題は抱えているものの、透明感のある世界観、悪人への強い感情、言葉遊び、「ウソ」と現実のブレンド、と伊坂幸太郎のオリジナリティはすでにここに見ることができます。
単行本では賞への応募作として論評を加えられていますが、まぁみんな言いたいようにいっているだけで特に見るべきものは見当たりませんでした。これだけのものを書かれて賞をあげないわけにはいかないでしょう。
結構ほかの作品とは違う読後感で、これはこれでよかったのですが、その後の本を見ると、この感じに留まらなくて良かったなとも思いました。
なんか出世作、とかいうとこっちまで緊張して読んでしまいました。
フグを調理する。食べないけど/不惑の手習い
不惑の手習い
島田雅彦
- 不惑の手習い/島田 雅彦
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ビジュアルで(も)売れる島田雅彦の、コスプレ本。
といったら言いすぎですが、プロのモデルカメラマンをつけて、色々習い事をやっているところを撮影しています。
UOMO連載。
ニ胡
書道
カクテル
礼法
手揉み茶
左官
フィギュア
フリークライミング
トランポリン
ジャイロトニック
刀鍛冶
天ぷら
いけばな
蓄音機
ウエスタンライディング
スポーツ吹矢
舞踏
ショコラ
フグ
写真
さすがに筆が立って、写真もきれいで被写体もいいので、そこそこ楽しめます。
習い事もなかなかのチョイスで読んでいて飽きません。
食べることはできないのに調理するフグや女性の裸体をつくるフィギュアなんかはウィットが効いていています。
舞踏や蓄音機なんかは意外とノッて楽しんでいますね。
でも、なんとなく全体的にピンをはずしている感じ。
導入部が長いし、だいたい何がカッコイイか、という話が多い。
そうか、島田雅彦がモテ系だから「カッコイイ」という話が枕にくるのか、と思っていたのですが、モテ系雑誌の連載、というのに合わせた可能性もありますね。もっと面白くなりそうだったのに、残念。
他の雑誌でも(ブルータスとか)、面白い企画のとき読んでみるんですが、結局調理方法が「いかにモテるか」となるので、隔靴掻痒です。いきが良くてモテ系でない雑誌、ないですかね。
逃げる。何から?/ゴールデンスランバー
ゴールデンスランバー
伊坂幸太郎
- ゴールデンスランバー/伊坂 幸太郎
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近未来の仙台で、首相が暗殺される。
気が付けば暗殺者に仕立て上げられ、警察から逃げる羽目に。
主人公は逃げきれるのか、そして疑いは晴れるのか。
と簡単に書いてしまえばこんな感じの作品ですが、癖も少なく読みやすく、代表作として仕上がっているのではないでしょうか。
変わっている点は、時制が現在だったり20年後だったりと入れ替わっていることですが、これも仕掛けの一部として楽しめます。読んだ後も。
相変わらずの構成要素、「言葉遊び」「破綻した善人キャラ」「悪人」「伏線」なんかも健在で、今までどおり十分に楽しむことができます。
ところで、今回構成要素の一つに「逃避」というものがあることに気が付きました。
権力にはできるだけ関わらない、という意味での「逃避」
もしかしたら直木賞辞退も「逃避」だったのかもしれませんね。
伊坂ファンも伊坂入門者も楽しめる本ですがストーリー展開が一番目立つため、それまで匂っていた体臭のようなものが薄まっているのが残念ですね。
なんていうんでしょう、車のハンドルのアソビとか洋服の着ごごちみたいな、意図していない部分のアキがなくなっているように感じました。「逃避」とそのアキの部分がもっとリンクできると皮膚感覚で伝わるようになったんじゃないかなぁ、と思うのですが、まったく勝手な個人的意見だと思います。でも、面白かったのになにか物足りなかったので。
意外に充実の2008年/2008年の本の話
2008年の読書を分野別にまとめてみました。
■作家
今まで年末年始に1年間の読書を振り返ると大体「いらん本をずいぶん読んだなぁ」という気持ちになっていたのですが、今年は意外にそんなことにはなりませんでした。その理由はと考えると飯嶋和一、伊坂幸太郎、梨木香歩に出会っていたからなんですね。年間読書の20%近くをこれらの作家で占められれば、それは文句をいうことはなにもありません。
飯嶋和一
「雷電本紀
」「神無き月十番目の夜
」「黄金旅風
」
読み応えのある作家です。歴史全体を書きながらも、個人の思いをしっかり書いていくところがいいですね。個人的には、主人公のある時点での早めの運命の見定めが読みどころです。
伊坂幸太郎
「砂漠
」「終末のフール
」「フィッシュストーリー
」「チルドレン
」「重力ピエロ
」「魔王
」「アヒルと鴨のコインロッカー
」「グラスホッパー
」「死神の精度
」
人気作家伊坂幸太郎に、「砂漠」「終末のフール」と個人的ツートップの作品に早い段階で出会えたのが勝因?です。問題意識の選択や表現の仕方にはとても同時代性を感じますね。
梨木香歩
「村田エフェンディ滞土録
」「水辺にて
」「春になったら苺を摘みに
」「からくりからくさ
」「沼地のある森を抜けて
」「家守綺譚
」「エンジェルエンジェルエンジェル
」
今年一番の収穫でした。特に近年のものはエッセイ、小説ともに意欲的にオリジナリティのある作品ばかりで、元来持っている小説技術の上に構築される世界観は、今までにない作家として今後も期待してしまいます。
■名作
この本、良かったです。本単体では2008年一番。それこそウン十年前の本なのに今読んでも十分読み応えがあり、せまるものがあります。過去の見知らぬ名作にも良い作品があることを予感させる、良い本でした。
■再読
高校のときに読んだ本ですが、鮮烈なイメージだけが残っていて、何に感動したかはさっぱり覚えていませんでした。改めて読んで、何に感動したか理解でき、その時には理解できなかったであろうことも分かって、貴重な体験となりました。
探偵小説の古典ですね。しかし完成形でもあるのでしょう。いつまでも読んでいたい楽しい本でした。
村上春樹の文体に似ているのは驚きましたね。
■ノンフィクション
松井浩「打撃の神髄 榎本喜八伝
」
天才打者の話なんですが、Wikiで見つけて興味をもって本があったので読みました。実にノンフィクション的欲求が満たされた本でした。
いやぁ、こんな人いるんだ、と思った本です。能力のある人は考えや行動のスケールが違いますね。
■エッセイ
奇妙なエッセイでしたが、池上永一という人の一端が垣間見え、小説の方にも興味がでてきたきっかけとなった本でした。たぶん今後もエッセイなんかは少なそうな気がする感じのエッセイでした。
■範疇外
海外SF?というまったくの範疇外の重厚な本に挑戦してみたのですが、意外に楽しく読めました。やっぱり面白い本は自分の範疇外でも面白いのだなと再認識。今後も色々なジャンルに挑戦していきたいと思います。
■ひいき
相変わらずのよしもとばななですが、今年の一本といえばこれでしょう。どんどんわが道を歩いていき、小説技術やテーマのレベルが上がってきていて、やっぱり新作は読みたくなる作家です。
年末滑り込みで読んだ本ですが「ディスコ」は圧巻でした。こんなに書き込んで大丈夫、と思えるほど。
であらためて「熊」を読んでその才能の確かさを確認。ついていくのはしんどい部分もありますが、やっぱり新作が読みたくなる作家です。
■やっぱり読めないもの
評判も高い。訳者も絶賛。でも自分には面白くない。そんな本もあるんだというのを再認識した本です。なんか読み方が分からないんですよね。くやしい。その分他の本読んでやる、という感じです。
さて、それから
■■アメブロ
もう、使っていない機能が山盛りで、ここにいてもいいのかと思うぐらいです。
他のブログにある機能が欲しいと思う反面(タグとか)、アメブロにつく機能は方向性が違うんですよね。
今更、という感じですが。
検索とかも一時はマシになったのですが相変わらず使えないですし。
新機能など、使ってよかったものなんかあれば教えてください。
少しは使っていこうと思います。
■■全般と目標
昨年は、日本の最近の小説が多かったですね。もっと海外も増やしていきたいし、ノンフィクションも増やしていきたい。
それから本選びに図書館を3件ほどまわっているのですが、もう、背表紙で読みたくなる本は大体読んでしまいルーチン的探書になりかけているので、積極的に他の方の薦めている本を読んでいきたいと思っています。
それから、本の紹介が基本のブログなのですが、書評以外にもなにかできたらいいな、と思っています。
-皆様-
昨年は相も変わらず個人的な感想を読んでいただき、まことにありがとうございます。
自分の感想を書いているとはいえ、やっぱり読んでもらってのブログです。
もっと面白い、もっと読みやすいブログを書いていきたいと思いますので、本年もよろしくお願いいたします。
LIKE A ROLLING STONE /不可能を可能にすること
不可能を可能にすること
長谷川滋利
- 素晴らしき!メジャーリーガー人生/長谷川 滋利
- ¥1,260
- Amazon.co.jp
(アマゾンになかったので違う本です)
表紙(子供と戯れる長谷川)もタイトルも日記であることもどれもイマイチですが、大リーグで活躍したこととアメリカでビジネスを始めたこと、「アメリカに行きたかった」という言葉などに興味があり、読んでみました。
多分一番活躍したであろう2003年(クローザーにもなって、オールスターにも出場した年)の日記。
最初の印象は、結構アバウトなんだな、ということ。
一球一球分析しているかと思いきや、そんなことはなく、部分部分で印象に残った球を書き込んでいました。
そして、繰り返し出てくる
●相手打者との投球を楽しむ
●すばやい投球を心がける
などの自分のテーマ。これほど書き込まないといけないのかと思うぐらい書いていました。
それほど凄い選手とも思っていなかったのですが、常に試行錯誤を繰り返し、それが受け入れられるアメリカという土地がよかったのでしょう。
求められるセットアッパーやクローザー像として、「これだけ相手打者の情報が分析される時代においては、そのデータどおり投げられるコントロールが良い投手も必要」というようなことをいっています。
あまりかっこよくないけど効果的だったすばやい投球なんかは、いかにも長谷川らしい投球ですね。
あれをてらいもなくやれるのがさすが。
読んで理解したのが、自己実現の本なんかを読んで、それを自分の糧にしていけるようなタイプの人なんだな、と。
それと、自分の持ち味と求められていることを上手くアレンジできたんだなと。
なんでしょう、転がる石には苔はむさない、という感じの人ですね。